UXデザインサービス活用例 #01
溶断・溶接機器の製造販売を行っている顧客は、自社製品を代理店を通して販売している。
顧客は製品そのものの差別化が難しい状況の中、新規ユーザ獲得と既存顧客の単価向上(*アップセル・クロスセル)という2つの課題を抱えていた。課題に対してヒアリングを行った結果、手探りの状態で企画を実施するのではなく数年後を見据えて長期的な計画を練っていく必要があることが分かったため、新規サービス企画支援を提供した。その中で、共にユーザ体験を検討することにより顧客内で理想の体験への認識を合わせることができた。また、顧客自身がユーザ視点で企画立案できるようUXデザイン基礎研修も併せて実施した。その結果、UXデザインや企画立案のノウハウが顧客内に蓄積され、長期的な課題に取り組むための計画を自分たちで行うことが可能となった。
顧客は歴史のある企業であり、高品質な製品を提供しているためユーザ(販売代理店、工場勤務者)から信頼されているという強みを持っている。また、製品のシェア率も高い。このような顧客が、今後も競合に勝ちながら長くユーザに愛される企業であり続けるためには新規ユーザ獲得と既存ユーザの単価向上(アップセル・クロスセル)を実現する必要がある。
しかし顧客業界の製品はJISやJWA等の規格に適合している必要があるため、製品の性能やデザインの面で他社との差別化を図ることは難しく、価格での差別化も限界がある。また、顧客内に企画経験者がおらず具体的かつ長期的なプランが立てられないという課題もある。
このような状況で課題を解決するために製品そのものでの差別化ではなく、ユーザがより良い仕事ができるように体験で差別化することになった。今回のメインユーザは工場へ製品を届ける販売代理店だが、実際に製品を利用する工場勤務者にとっても良い体験となるように検討を進めた。
今回顧客に提供したサービスは「新規サービス企画支援」である。
顧客はシステム開発企画の経験がなく、企画そのものに関する知識やUXデザインの取り入れ方の知見が豊富ではなかったため、このサービスを提案した。
新規サービス企画支援の流れ
Point①
ユーザ調査において被験者が見つからない時の対応
ユーザ調査を実施するにあたり、「溶断・溶接機器の販売代理店に勤めている被験者」「溶断・溶接業務に従事している被験者」が見つけられないという課題があった。顧客と販売代理店は普段から連携し合う関係でないため協力を依頼できない、リサーチサイトを使っても条件に当てはまる被験者がいないというのが要因である。
そこで、以下2点を実施することによりユーザ調査の被験者を集めることに成功した。
Point②
UXデザイン基礎研修
近年UXデザインがトレンドとなっており、IT業界以外でも重要性が認識されてきている。顧客もUXデザインの必要性は感じていたが学ぶ機会がこれまでなかった。そこで新規サービス企画支援の一環として提案したところ、企画部や営業部など多様な部門や立場の参加者が集まった。
研修内のテーマに対して実際UXデザインを実践してみることにより多くの気づきや学びが得られたと受講者からコメントを頂いた。
Point③
体験設計ワークショップ
UXデザインプロセスは基本的にTDCソフトが主体となって進めていた。しかし、顧客が今後サービス提供を行っていくにあたり、TDCソフトだけですべてを決めてしまっては顧客の納得感やモチベーションにつながらない。当事者である顧客と共に理想を検討し、決定していくことで納得感が醸成され前向きに取り組めると考えワークショップ形式で体験設計を実施した。
参加者アンケートには、「チームの方向性が一致したと感じた」「これから提供していくサービスのユーザ体験は良いものになりそうだと感じた」という意見を頂いた。
ワークショップの流れ
01.ユーザ調査~ユーザモデリングの結果説明
ユーザモデリングまでのプロセスはTDCソフトが実施していたため、まずそこまでの結果を顧客に共有し、参加者間で実際のユーザ像の認識を合わせた。
02.コンセプト検討
インサイトをもとに、代理店に提供すべき体験のコンセプトを検討した。顧客はUXデザイン未経験であるため、0からコンセプトを考えてもらうのではなくTDCソフトが挙げた候補をベースに顧客全員が納得できるコンセプトに仕上げた。
03.アイディア出し
インサイトと決定したコンセプトに基づき、代理店に提供する具体的な施策のアイディアを出した。参加者個人で持っているアイディアを出す手法(ブレインダンプ)とグループで会話をしながらアイディアを出す手法(アイディアしりとり)を実施し多くのアイディアが集まった。その後、出したアイディアに対し、どれがユーザに喜ばれ、効果が高いのか参加者全員でディスカッションを行った。
TDCソフトが主体となり顧客も巻き込んで共にUXデザインを行うことで顧客側にノウハウが蓄積され、顧客自身でもUXデザインを活用して企画立案を行うことができるようになった。また、顧客間で認識を合わせて全員が理解・納得しながら進めることにより新規サービス企画をより自分事化することができた。今後も企画を立てる際はユーザ目線で価値ある体験を検討することができることだろう。
これから先の未来、IT企業でなくてもUXデザインを取り入れて企画をしていくことがあたりまえになるようにTDCソフトは支援を続けていきたい。