導入事例インタビュー

「ニーズを捉える
ところから実践で学ぶ
良い機会になりました」

函館工業高等専門学校
生産システム工学科
小山 慎哉 教授

2024.10.16

函館工業高等専門学校 様

デザインスターターキットでユーザ目線でモノづくりができる人材を育成

概要

函館工業高等専門学校*(以降函館高専とする)、生産システム工学科の「ヒューマンインタフェース」という授業は、将来モノづくりの道に進む生徒たちが、人間の感覚・知覚・認知特性を学び、ユーザが使いやすいインタフェースを開発する視点を養うことを目的にしている。

授業を担当する小山教授は「せっかくモノづくりをするならば、人が間違えずに使えるものを作れるようになってほしい」「モノづくりの視点としてユーザ視点が大切であることを学んでほしい」と授業に対する思いを語った。そこで、TDCソフトが「デザイン思考スターターキット」を提供し、2年間にわたり授業内での実践教材として活用いただいた。

*高等専門学校とは実践的・創造的技術者を育てることを目的とした教育機関で、工学や情報技術などの専門分野に特化した教育が行われている。
*函館高専では、3学科、6専攻で約1000人の生徒が学んでいる。これまでに産業の発展を担う優秀な技術者を多く送り出し、官公庁・大手優良企業・地場企業など、社会で高く評価されている。

課題と背景

モノづくりを仕事にする上で生徒たちには「独りよがりではなく、ユーザのことをちゃんと考えたものを作れるようになってほしい」と強く願っている小山教授だが、そのための実践の場が少ないことを課題に感じていた。これまでに、SNS上からBAD UIの例を集めてクイズ形式で悪い部分を回答させたり、スマホアプリを評価するレポート課題を出したりして理解していることは分かったが、正しく活用できるか否かが見えにくかったという。

デザイン思考スターターキットとは?

デザイン思考スターターキットは、デザイナーでない人でもデザイナーと同じ思考をすることにより、ユーザ視点でモノづくりやサービス提供ができるようになることを目的としてTDCソフトが開発した。キットは9種類のワークシートとアウトプットの質をチェックできるチェックシートがセットになっている。チェックシートは、各ワークシートとセットになっているため、ワークシートの作業完了後すぐにチェックすることが可能だ。

ワークシートはテーマやかけられる時間に応じて以下のシートを組み合わせ、順番を入れ替えて利用する。

デザイン思考スターターキットの詳細については、「お問い合わせフォーム」からお気軽に問い合わせいただきたい。

スターターキット活用の流れ

サービスは2022年度と2023年度の2年間にわたり提供した。1年目は以下の流れでスターターキットを活用いただいた。
以下は1年目の活用の流れである。

2022年度は授業で出てくるアウトプットを毎週TDCソフトがレビューした。しかし、授業時間に制限があるためフィードバックをアウトプットに反映することができず、正しくユーザの潜在ニーズを捉えることや質の高いアウトプットを作成することが難しいという課題があった。そこで、カイゼン策としてアウトプットチェックシートの作成と、インタビュー&分析ワークショップの実施タイミングを変更し、2年目は以下の流れで活用いただいた。

次項でスターターキット活用授業のポイントである、「インタビュー&分析ワークショップ」と「アウトプットチェックシート」について説明する。

Point1. アウトプットチェックシート

2022年度のようにアウトプットを作成後、フィードバックを得るまでに期間が空いてしまうとスピード感に欠ける上、当時の自分の思考を忘れてしまう。そこで、アウトプット作成後すぐにセルフレビュー、ピアレビューができるようアウトプットチェックシートを作成した。

チェック項目は、内容の伝わりやすさと初心者にありがちなミスに陥っていないかの観点から作成している。また、ピアレビューを実施した場合、レビュアーがアドバイスを記入できる欄を設けた。他者のアウトプットを見る立場になることでアウトプットのカイゼン点を見つける力が養われ、自身のアウトプットの質向上にもつながることが狙いである。

チェックシートを活用した結果、最初のアウトプットを修正した生徒は全体の57%に及んだ。

中には、自己Rvを通してテーマの課題解決+@の価値を生み出すことができた生徒もいたため、以下に紹介する。

Point2. インタビュー&分析ワークショップ

ユーザが本当に喜んでくれるものは作るためには、潜在ニーズを正しく捉えことが重要である。しかし、デザイン思考初心者にとって一番の難所はユーザの潜在ニーズを捉えるプロセスである。2022年度に取り組んだ学生たちも、ユーザの潜在ニーズをうまく捉えられず、目に見えているニーズとそれに対する解決策に着目してしまう傾向があった。
そこで、2023年度は学生がユーザ調査に取り組む前に練習としてインタビューと分析の体験ができるワークショップをTDCソフトが実施した。

ワークショップの最初に、TDCソフトがこれまでの経験から特に重要だと考えているインタビューのコツを学生に伝え、学生が事前に考えてきた質問内容の見直しと質問の追加を実施した。このとき、インタビュー本番でもより良い回答を引き出す質問の仕方ができるように、学生の考えに対して足りていない視点から問いかけやアドバイスを送った。また、分析体験時も同様に深掘りのための問いが自力で出せない学生向けに問いを記載し、深掘りするときの考え方を伝えた。

このワークショップにより、学生たちのユーザ調査に関する知識レベルと実践力が向上した。また、小山教授は「普段は黙々と自分の作業に取り組むタイプの生徒も、インタビュー体験では生き生き会話していた」とこれまでの授業では得られなかった成果への期待を述べた。

まとめ

2023年度のヒューマンインタフェースの授業終了後に生徒に対してアンケートを取ったところ、日常生活の中でユーザ視点で考えたり行動している生徒は2022年度と比較して36%も増加していた。
また、小山教授曰く2022年度の卒業生たちも卒業研究の中でインタビューの仕方や潜在ニーズの捉え方を活用していたという。また、スターターキットを授業に活用することで、生徒たちに対するデザイン思考の説明が楽になったというコメントをいただいた。

スターターキット活用に関して他の学校からも問い合わせをいただいており、今後ますますユーザ目線でモノづくりをする重要性は高まっていく。函館高専生のように「ユーザ視点で思いやりの心を持ち、人の生活を豊かにできる」人材育成にTDCソフトは貢献していきたい。

函館工業高等専門学校
函館工業高等専門学校(函館高専)は、1962年4月に高等専門学校(高専)の第一期校として開校されて、2022年に創設60周年を迎えた。国の枠を超えて社会の課題発見・解決策に向け、「自ら考えて行動できる力」を持ったグローバルエンジニアを育成するために、実験・実習などの実践的な専門技術教育の他に、海外教育機関と連携強化を図りながら国際交流活動やSTEAM教育等も導入している。
使用したテクノロジー
UXデザイン
真のDXを実現するためには、CX/UXデザインプロセスは不可欠。ユーザーの潜在ニーズとお客様の想いを正しく繋げ、使う人が心から喜べる体験づくりを支援します。
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