4時間でアジャイルを学ぶ!スクラム研修参加レポート
アジャイルとは何か、いざ聞かれたらどう答えるだろうか? アジャイルはシステム開発の方法論と思われがちだが、実は組織のあり方全体に影響を与え、より良い価値を顧客に届けるために有効な手法だ。VUCAな時代には探索型のアプローチが必要で、その実現に最適でもある。自社のプロジェクトにアジャイルを取り入れたいが、どこから始めたらいいのか分からない、そもそもアジャイルとは何かを知りたい、そんな企業におすすめしたいのがTDCソフトの「スクラム研修 基礎編」だ。
オンラインで実施された研修は、Web会議ツールとオンラインホワイトボードをフル活用。講義内容を映すだけでなく、ホワイトボード上の付箋で質問回答を行う。質問について講師は、「質問は恥ではなく、皆の学び。ぜひ積極的に質問をしてほしい」と強く訴える。アジャイルやスクラムでは透明性が重要なキーワードとなる。アジャイルなマインドセットを醸成するためにも、ホワイトボード上に記入された質問へは、全員に向けて回答。参加者は十数人で、ワークショップを行うため4つのチームが構成された。
冒頭で、まず研修に参加した目的を聞かれた。それを受けて講師がVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代においては、アジャイル無くしては生き残れないということを、各業界の市場シェアの変化などを用いて分かりやすく解説した。その後アジャイルの「Don’t just do agile, be agile.(アジャイルをするだけでなく、アジャイルになろう)」という基本的な考え方を紹介。すなわち、アジャイルのプロセスを実践するだけでなく、アジャイルのマインドセットが重要と力説した。
冒頭からの進め方で印象的だったのは、一方的に説明するだけでなく双方向コミュニケーションで、興味を喚起しながら進める点だ。時々挿入されるクイズや質問が興味を持続させ、4時間という長丁場でも集中力を途切れさせない。内容的には「アジャイルの考え方が経営戦略レベルから活用できる普遍的なもの」と説明されたのが印象的だった。「アジャイル=開発手法ではない」と分かり、冒頭からアジャイルに対する印象が大きく変わった。
その後チームに分かれて10分間のブレイクセッションを実施。自己紹介とチーム名の決定を行い、アジャイルに関する印象を話し合った。そこで再び講義に戻り、アジャイルを円滑に進めるための「スクラム」について学ぶ。先行きが不透明なVUCAな時代では探索型のアプローチが重要で、そのためには実践と振り返りのサイクルを繰り返しながら最適化していくスクラムが最適であると紹介。この取り組みが、経験的プロセス創造につながると語られた。
このパートで感じたのは、講師陣が実際にアジャイルプロジェクトに取り組んでおり、講義内容に説得力があることだ。スクラムの失敗談も聞くことができ、スクラムを行いさえすればすべてが解決する訳ではないという当たり前のことがよく分かる。内容的には「スクラムのプロセスによる開発=アジャイルな開発ではない」という点が印象的だった。前段同様単なる方法論や技術論ではなく、その考え方を分かりやすく繰り返し伝えており、解説書を読んだだけでは分かりにくい根本的な考え方が身につくと感じた。
ここから研修のハイライトであるスクラムのワークショップに突入。スクラムのイメージを体験するため、チームに分かれてワークに取り組んだ。あるユニークな「お題」が出され、計画、作業、レビュー、振り返りのサイクルを3回繰り返す。同じことを繰り返すことで目標設定や作業の進め方をチューニングし、成果のカイゼンを図っていく。その結果、全チームとも成績が上がり、目標との乖離も縮小した。最後にチーム内で得られた気づきを話し合いホワイトボードに記入、それを講師が講評するとともに、ここで出なかったより良い結果を得るためのヒントを紹介した。
ワークショップのお題は誰でもできる簡単なワークだったが、予想以上に白熱。サイクルを繰り返すたびに、各チームの経験値が上がり、集合知が生まれるのが目に見える。「計画と振り返りを繰り返すことで成長を実感できた」「目標に向かって協力することで一体感が生まれた」といったチームメンバーの感想も興味深い。さらに成果をあげるヒントとして講師が、「講師に対しルールの確認や緩和するためのコミュニケーションも試す意味がある。講師を顧客と読み替えれば、実際のプロジェクトで有効」と語った点が刺激的だった。
ワークショップ後休憩を挿入したが、その時間は参加者に意向を聞きながら決定。スクラムは自律的な組織を目指すため、研修中も極力参加者の自律性を高めようとする姿勢が感じられた。
最後のパートでは、ワークショップ体験を踏まえて、実際のプロジェクトで運用するスクラムの詳細を、ステップごとに学んだ。計画から振り返りまでのスプリントの期間は固定すべき、ステークホルダーが評価をするためのインクリメントはリリースの判断ができるものをつくらなければならないといった様々な基本原則が語られた。さらに、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者のロールを紹介。これまで日本で一般的な上下関係のあるチームとは全く違う考え方のチームである点が強調された。
ワークショップを終えた直後であり、実際のプロジェクトに適用するスクラムの仕組みがすんなりと理解できる。また、単なる「やり方」の説明ではなく、ステップごとの「意味」が丁寧に解説された。