ServiceNow コラム

近年、多くの企業がIT業務の効率化や可視化を目的としてServiceNowを導入しています。特に構成管理(Configuration Management)、資産管理(Asset Management)、脆弱性管理(Vulnerability Management)は、IT運用の中核を担う分野として注目されています。しかし、導入が失敗に終わり、期待した成果を得られないケースも少なくありません。本コラムでは、これらの管理領域における導入失敗談を振り返りながら、成功するための重要な要素を探ります。

最新の構成情報取得の重要性

最新の構成情報を取得することは、単なる運用効率化の枠を超え、社会的要求を満たすための必須条件となっています。現代のビジネス環境では、セキュリティリスクへの迅速な対応や、法規制への準拠が求められており、これに対応しないことは重大なリスクを伴います。

最新の構成情報取得のメリット

• セキュリティリスクの低減:正確な情報をもとに脆弱性やリスクを迅速に把握し、対策を講じることが可能。
• 影響範囲の正確な把握:インシデント発生時に影響を受ける構成要素を特定し、復旧計画を効果的に策定。
• 規制遵守のサポート:監査や規制対応において、正確な構成情報が求められる場面に対応。

対応しない場合のリスク

• セキュリティインシデントの拡大による信用失墜や法的責任。
• 遅延した対応による業務停止や経済的損失。
• 規制違反による罰則や事業停止のリスク。

CMDBの主な機能

1. 構成アイテム(CI)の管理

• ITインフラやサービスを構成する要素(サーバ、ネットワークデバイス、アプリケーション、クラウドリソースなど)を「構成アイテム(CI)」として登録。
• CI間の関係性(依存関係や接続情報)をモデル化。

2. サービスマッピング

• CIを基にITサービス全体の構造を視覚化。
• 各サービスがどのCIに依存しているかを明確に把握。

3. データの信頼性向上

• データ品質ダッシュボードを提供し、CMDB内のデータが正確で最新かを監視。
• データ検証ルールを適用してエラーや不整合を特定。

4. インシデントや変更管理との統合

• インシデントや変更管理で影響を受けるCIを特定し、影響範囲の可視化を実現。
• リスク評価や変更承認プロセスを効率化。

5. ダッシュボードとレポート

• CI情報や関係性を可視化するカスタマイズ可能なダッシュボード。
• リアルタイムレポートを使用して、トレンドやリソース利用状況を分析。

構成情報の自動取得

ServiceNow CMDBは、構成情報を手動で入力するだけでなく、さまざまな方法で自動取得する機能を備えています。

1. Discovery機能

• ネットワークスキャン:
  ・サーバ、デバイス、アプリケーションなどをネットワーク経由で検出。
  ・IP範囲を指定してスキャンを実行し、CI情報をCMDBに自動登録。
• エージェントレス:
  ・サーバやデバイスに直接エージェントをインストールせずに情報収集可能。
• エージェントベース(MID Server利用):
  ・セキュアな接続を介して構成情報を収集。

2. サービスマッピング

• 特定のアプリケーションやサービスのトポロジーを自動的に作成。
• アプリケーション間の依存関係やデータフローを検出。

3. Integration Hub

• 他のシステムやツール(監視ツールやクラウドサービスなど)と連携してCIデータを自動的に取り込み。
• 例: AWS、Azure、VMware、Ansibleなどの統合。

4. イベント管理(ITOM Event Management)

• モニタリングツールやログデータからイベント情報を収集し、CMDBを更新。
• イベントからCIの変更を検出してリアルタイムで更新。

5. 外部データのインポート

• スクリプトやAPIを利用して、既存のスプレッドシートや外部システムからのデータをCMDBに取り込み。
• データインポートプロセスの自動化。

CMDBのメリット

1. 可視性の向上: IT環境全体の構造を把握しやすくなる。
2. 運用効率の改善: 手動作業を減らし、正確なデータ管理を実現。
3. リスク管理: サービス停止や変更による影響を最小限に抑える。
4. 問題解決の迅速化: インシデントや障害の根本原因を迅速に特定可能。
これらの機能を活用することで、IT運用の効率性と信頼性を大幅に向上させることができます。

構成管理(Configuration Management)

構成管理は、ITインフラやアプリケーションの構成要素(CI: Configuration Items)を記録し、それらの関係を把握するプロセスです。これにより、インシデント対応や変更管理がスムーズに行われ、システムの可用性が向上します。

機能詳細

• CIの登録と追跡:システムのハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク要素などを一元管理。
• 関係性の可視化:CI同士の依存関係を図示し、影響範囲を明確化。
• 変更履歴の記録:CIの変更履歴を追跡し、変更管理プロセスを最適化。

導入しなかった場合のリスク

• インシデント発生時の原因特定に時間がかかる。
• 計画外の変更がシステム障害を引き起こす可能性。
• IT資産の全体像が不明確になり、管理が煩雑化。

失敗例:適切なCMDBの設計ができなかったケース

構成管理データベース(CMDB)はServiceNowの基盤として機能しますが、適切に設計されていない場合、データが混乱し、管理負荷が増大することがあります。ある企業では、CMDBの項目を過剰に定義した結果、手動入力が多くなり、担当者が入力作業に疲弊しました。その結果、正確性が低下し、CMDBは使い物にならなくなりました。

成功への鍵

• 要件定義の明確化:初期段階でビジネスに必要な構成要素を明確にし、過剰な項目を避ける。
• データの自動化:自動検出ツールを活用して、構成アイテム(CI)のデータ入力を可能な限り自動化する。
• 継続的改善:運用中に得られたフィードバックを基にCMDBを改善し続ける。

導入のメリット

• システム障害時の迅速な原因特定
• 変更管理プロセスの効率化
• IT資産の全体像の把握による運用コストの削減
• CMDBにより自動的に最新の構成情報を更新する仕組みによるリソースの効率化
• セキュリティリスクの低減や影響範囲の正確な把握
• システム障害時の迅速な原因特定
• 変更管理プロセスの効率化
• IT資産の全体像の把握による運用コストの削減

資産管理(Asset Management)

資産管理は、ITハードウェアやソフトウェアのライフサイクルを管理するプロセスです。これにより、資産の最適な利用、コスト管理、そしてコンプライアンス遵守が可能になります。

機能詳細

• 資産台帳の作成:全IT資産の登録とステータス管理。
• ライフサイクル管理:調達から廃棄までのプロセスを一元化。
• コスト管理:資産ごとの費用配分と最適化。

導入しなかった場合のリスク

• 資産の紛失や未使用資産の増加によるコスト増大。
• ソフトウェアライセンスの過不足によるコンプライアンス違反。
• 資産の老朽化による予期せぬシステム障害の発生。

失敗例:資産データの一元化に失敗したケース

ある企業では、ServiceNowを導入する前に複数のシステムで資産情報を管理していました。しかし、移行時にデータが重複していたり、不完全であったりしたため、一元化に失敗しました。この結果、資産の追跡が困難になり、余剰資産や紛失資産が増加しました。

成功への鍵

• データクレンジング:導入前に既存の資産データを整理し、正確性を確保する。
• 運用ルールの統一:資産登録や更新のルールを全社的に統一する。
• 教育と定着化:関係者にツールの使用方法とベストプラクティスを教育し、定期的なトレーニングを実施する。

導入のメリット

• 資産コストの最適化
• ソフトウェアライセンスのコンプライアンス遵守
• 資産の利用状況やライフサイクルの可視化

脆弱性管理(Vulnerability Management)

脆弱性管理は、システムやアプリケーションのセキュリティ脆弱性を特定し、リスクを軽減するプロセスです。これにより、サイバー攻撃のリスクを最小限に抑えることができます。

機能詳細

• スキャンと評価:脆弱性スキャンツールを使用してリスクを特定。
• 優先順位付け:影響度や緊急度に基づく対応の計画。
• 修正管理:パッチ適用や設定変更を追跡。

導入しなかった場合のリスク

• サイバー攻撃によるデータ漏洩や業務停止。
• セキュリティ規制の違反による罰則や信用失墜。
• 脆弱性が放置されることで被害が拡大。

失敗例:脆弱性データの優先順位付けができなかったケース

ある企業は、脆弱性スキャンツールをServiceNowと連携させましたが、脆弱性情報が膨大すぎて対応が追いつきませんでした。また、リスク評価基準が明確でなかったため、重要な脆弱性が後回しにされる事態が発生しました。

成功への鍵

• リスクベースの優先順位付け:影響度や緊急度に基づいて脆弱性を分類し、優先的に対処する。
• 統合されたワークフロー:脆弱性対応のプロセスをServiceNow内で管理し、進捗を可視化する。
• 継続的なモニタリング:スキャンの頻度を適切に設定し、脆弱性管理を継続的な取り組みとして捉える。

導入のメリット

• サイバー攻撃リスクの軽減
• セキュリティ対応の効率化
• 規制遵守と企業イメージの保護

共通の課題と解決策

これら3つの領域において共通する課題の一つは、「ツールの導入が目的化する」ことです。ServiceNowはあくまで手段であり、導入の目的を明確に定義することが不可欠です。

導入失敗を防ぐための共通ポイント

1. ステークホルダーの巻き込み:IT部門だけでなく、関連部門の意見を取り入れる。
2. 段階的な展開:全機能を一度に導入するのではなく、優先順位をつけて段階的に展開する。
3. 外部の専門知識の活用:経験豊富なコンサルタントを活用して、ベストプラクティスを採用する。
4. KPIの設定と測定:導入の効果を定量的に評価する指標を設定し、進捗を継続的に確認する。

まとめ

ServiceNowの構成管理、資産管理、脆弱性管理を成功させるためには、適切な計画と運用プロセスの整備が重要です。失敗例から学び、明確な目的設定、データの正確性、そして組織全体の協力を得ることで、ツールの価値を最大限に引き出すことが可能です。導入を検討している企業は、失敗を恐れるのではなく、計画段階から成功への鍵を握る取り組みを始めましょう。

ServiceNow導入は認証パートナーである当社にお任せください

ServiceNowの導入には、専門的な知識や実績が不可欠です。当社はServiceNow認証パートナーとして、多くの企業における成功事例を持ち、検討段階から保守運用に至るまでの一貫したサポートを提供しています。
• 初期検討:お客様の課題や目標をヒアリングし、最適なソリューションを提案します。
• 導入支援:計画、実装、データ移行、従業員トレーニングまで包括的にサポートします。
• 運用と保守:導入後も継続的に改善提案を行い、最新の状態を維持します。
まずはお気軽にご相談ください。ServiceNowを活用して、貴社のビジネスを次のレベルへ引き上げるお手伝いをいたします。